名義変更
相続時には、財産の名義変更の手続きが必要になることがあります。
名義変更が終わらないと財産の処分などができなくなってしまいますので、滞りなく手続きを終えるようにしましょう。
名義変更が必要になる財産
名義変更が必要になる財産としては、次のようなものがあげられます。
預貯金
相続人が被相続人が亡くなったことを銀行に連絡すると、被相続人名義の口座は凍結されます。
いったん凍結された口座については、原則として相続手続きが終わるまでは相続人であっても払い戻しを受けることができません。
また相続手続きが終わり、預貯金を誰が相続するかどうかが決まった後については、引き出しなどを行うために名義変更の手続きが必要になります。
その際には遺言書や遺産分割協議書、被相続人の戸籍謄本または全部事項証明、相続人の印鑑証明書といった書類を提出しなければなりません。
なお、手続き時に実際に必要となる書類の内容については、金融機関によって異なります。
相続が起きた際には、各金融機関にお問い合わせください。
不動産
不動産の場合、名義変更をしないと、売却したり、賃貸に出したりすることができません。
また、相続手続きが大変になる可能性があるのも、名義変更をしないでいるリスクとなります。
特に、相続時に登記をしないまま放置しておくと、次の相続が起きて相続関係が複雑になってしまうこともあります。
何世代にわたって名義変更をしなかったような場合、ねずみ算式に相続人が増えていってしまうことになるからです。
そうするとかえって手続きが複雑になり、気づいたときには相続登記がスムーズにできないということになりません。
なお、2022年時点では相続登記の申請は義務ではありません。
しかし、相続登記をされないことが原因で所有者不明の土地が発生して問題になったことから、民法などが改正されて2024年4月1日以降は相続登記が義務化されることになりました。
改正後の法律のもとでは、相続で不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
株式
株式も名義変更の手続きが必要です。
その場合は、遺産分割協議などで株式を誰がもらうかを決めた後、株式名義書換請求書、相続人全員の印鑑証明書などの書類を添えて、手続きを行うことになります。
この手続きは上場企業の場合は信託銀行や証券会社、非上場株式会社の場合は当該会社との間で行うことになります。
自動車
自動車は登録制度があることから、不動産と同じように扱われます。
名義変更をしないかぎり、廃車にしたり売却したりすることはできません。
自動車の名義変更については、他の財産と同様に誰が車をもらうかが決まった後で、運輸支局で必要な手続きを行うことになります。
その際には、遺産分割協議書や関係者の戸籍謄本をはじめとする各種書類が必要です。
もっとも、軽自動車の相続では通常の売買と同じ手続きで名義変更をすることができるため、戸籍謄本等の書類は必要ありません。
なお、故人と同居していない相続人が自動車を相続する場合には、車庫証明書が必要になります。
その他
借地権、電話加入権、ゴルフの会員権なども名義の変更が必要になります。
その他、ガスや水道、電気の契約、スマホの契約、各種のサブスク契約、保険、クレジットカードなどについても名義変更や解約といった手続きが必要になりますので、早めに契約先に連絡しましょう。
遺産分割協議が始まる前に現金が必要になった場合は?
相続手続きや名義変更が終わるまで、故人の口座から預貯金を引き出すことは原則としてできません。
しかし、葬式代や当面の生活費などまとまった現金が必要になることもあります。
こういった場合において、故人の口座からお金を引き出せないと困る、という人もいるでしょう。
このような事態に対応するために、民法では、相続人であれば相続の手続きが終わる前でも故人名義の預貯金の一部を引き出せるという制度(預貯金の仮払い制度)を設けています。
引き出せる金額の上限は、①150万円、②相続開始当時の残高×1/3×法定相続分という計算で求めた金額のうち、低い方の金額です。
つまり、②で計算した金額が100万円だった場合は100万円が上限額になりますし、200万円だった場合は150万円が上限額になります。
相続の相談は弁護士に
相続では、相続財産の調査などひとりでは難しい手続きも少なくありません。
また、財産の内訳や遺言の内容によってはトラブルになり、なかなか相続手続きが進まないという事態も起こりえます。
スムーズに相続手続きを済ませるためにも、不安なことがありましたら、まずはご相談いただければと思います。