生前対策
相続トラブルの予防には、生前対策が重要だという話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
元気なうちに財産管理や将来の相続に備えておくことは、家族の将来の幸せにもつながります。
ここでは代表的な生前対策の内容や実際に手続きを進める際の注意点について紹介します。
相続トラブルを防ぐためには生前対策が重要に
相続トラブルの大半は、本人が生前に何らかの対策を行っておくことで防ぐことができるものです。
もちろん、すべての相続トラブルを予防できるというわけではありませんが、本人が健康なうちに健康不安を抱えた後の財産管理や遺産の分け方について決めておけば、トラブルになるリスクを減らすことができます。
一度相続トラブルが起きてしまうと、家族関係にひびが入り、修復不能になってしまうおそれもあります。
家族間の争いを防ぐためにも、自分の財産の使い方に自分の意思を反映してもらうためにも、生前対策を行うことは重要です。
代表的な生前対策
代表的な生前対策としては、次のようなものがあげられます。
遺言の作成
遺言を作成することで、遺産の分け方に自分の意思を反映させることができます。
特に公正証書遺言は偽造・変造が難しいため信頼性が高く、また書式のミスによる無効トラブルも起きにくいというメリットがあります。
遺言については遺言者自らが自筆で作成する方法(自筆証書遺言)もありますが、トラブル防止という意味では公正証書遺言がおすすめです。
任意後見契約
任意後見契約は、認知症などによって財産管理が難しくなった際に備えて、あらかじめ代わりに財産管理を行ってくれる人を選んでおくものです。
任意後見人となった人は家庭裁判所や後見監督人に財産の管理状況を報告する義務を負っているため、適切に財産管理が行われる可能性が高くなります。
信託
信託は、自分の財産を受託者に託して管理してもらい、そこから得た利益を自分や他の家族が受け取れるようにする制度です。
特定の目的(信託目的)と財産から利益を受け取る人(受益者)を決めた上で受託者に財産の所有権を移転し、受益者のために財産を管理・運用してもらいます。
受益者は財産管理を委託する本人でも、それ以外の人でも構いません。
将来認知症になったときに備えて財産管理を信頼できる人に頼む、孫を受益者にして教育資金を信託する、といった使い方もできます。
自分で財産管理ができない障害のある子どもやペットにお金を残すために信託が活用されることもあります。
生命保険
契約者・被保険者を被相続人とし、財産を残したい人を受取人に指定することで、自分の好きな人にまとまった金額の金銭を残すことができます。
生命保険の特徴は、保険金は受取人固有の財産として扱われるということです。
遺産分割の対象にはならないため、遺留分の計算にも含まれないというメリットがあります。
相続税などの納税資金にあててもらう目的で一部の相続人に財産を残したり、お世話になった人に財産をあげたりと、さまざまな目的で活用できる生前対策です。
生前贈与
生前贈与は相続税対策としてもよく行われる生前対策です。
自分が生きているうちに財産の一部を特定の人に贈与します。
特定の人に特定の財産を残せるほか、贈与のやり方によっては相続税・贈与税の軽減につながるというメリットがあります。
ただし、生前贈与は贈与した金額などによってはかえって遺留分や税金のトラブルにつながるケースもあります。
専門家に相談しつつ、慎重に行いましょう。
生前対策を行う場合の注意点
生前対策を行う場合、その内容によっては特定の人物に財産が集中し、他の相続人からの反発を招くリスクがあります。
たとえば事業承継のために自社の株式や事業用の資産を後継者に贈与・相続させるような場合、これらの財産の評価額によっては相続時に遺留分の問題が起きることもあるかもしれません。
そのため、家族とよく話し合って了解を得ておく、あらかじめ遺留分の支払いに使うための金銭を用意しておく、といった対策が必要になります。
生前対策の相談は弁護士に
ひとことで生前対策といってもさまざまな方法があり、どの対策が適切なのかは各家庭の事情によって異なります。
さらに、選んだ方法ややり方によってはかえって家族の不満を招き、相続トラブルの火種になるケースもないわけではありません。
実際に生前対策を行う上では事前に専門家のアドバイスを聞き、また家族の気持ちも考えながら手続きを進めていくことが重要になります。
もし生前対策を検討されているのであれば、一度ご相談いただければと思います。