預金を使い込まれてしまった
「親の遺産を兄弟が使い込んだ！」「あるはずのお金が口座にまったく残っていない」……こうした使い込みトラブルは残念ながら、非常によくあるものです。
相続人の１人に使い込み疑惑が持ち上がった場合、他の相続人がまずやるべきことは真相を把握すること。
ここでは使い込みトラブルに巻き込まれたときの対応について紹介します。
故人の財産管理をめぐってトラブルになるケースは珍しくない
故人の預貯金が相続人の１人に使い込まれていた、というのは相続トラブルの中でも非常に多いものです。
特に、相続人の１人が被相続人と同居していたり、財産管理を任されていたりするような場合については、こうした使い込みのトラブルが起きやすくなっています。
「遺産を確認してみたら、通帳の残高がほとんどなかった」「財産管理を任されていた兄弟の言動に不審な点がある」といった理由から、財産管理を行っていた人物に対して疑惑の目を向けている方もいることでしょう。
しかし、預貯金の使い込みトラブルを本人同士の話し合いで解決するのは難しいことです。
相手方が自分から使い込みを認めてくれるとは限らないからです。
このようなケースでは、使い込みを主張する側が使い込みの証拠を集め、相手の疑惑を追及する必要があります。
使い込み疑惑が持ち上がったときに集めるべき証拠とは
使い込みがあった場合、交渉や訴訟によって使い込んだ分の金銭の返還などを求めることになります。
しかし、単に使い込み疑惑があるというだけでは、こちらの主張を相手方に認めさせるのは困難です。
実際に「使い込みがあった」という主張を展開するためには、使い込みを主張する側が証拠を集め、相手方が故人の財産を自分のために消費したがあったことを証明しなければなりません。
具体的には次のような証拠を集める必要があります。
銀行の入出金記録や払戻請求書のコピー
まずは銀行の入出金記録や払戻請求書のコピーを取り寄せ、お金の動きに不審な点がないかどうかを確認することが大切です。
通常必要となる生活費以上の出金がなされている場合やATMで何度も1日に引き出せる金額の上限である50万円の出金がある場合、故人の居住地から遠く離れた銀行の支店で取引があったような場合は、実際に使い込みがあった可能性が高くなります。
また、払戻請求書など窓口で出金した際に提出する書類を確認することで、その出金が少なくとも故人が行ったのかどうかを判別することができます。
介護・医療関連の記録
介護認定記録や介護記録といった介護の記録、カルテなどの医療記録も、使い込みの立証に役立ちます。
これらの記録を見ることで、本人が自分でお金を入出金できるような健康状態にあったかどうかがわかるからです。
これらの記録から、本人の判断能力が大幅に低下していた、あるいは自ら銀行で入出金できるような健康状態でなかったことが証明できれば、問題となっている口座からの出金が本人がやったものではない、あるいは本人の意思に基づいていない、ということの裏付けになります。
使い込みトラブルを弁護士に相談するメリット
使い込み疑惑が持ち上がった場合、弁護士に相談することで調査やその後の対応をスムーズに進められる可能性があります。
使い込みトラブルを弁護士に相談・依頼する具体的なメリットは次の通りです。
証拠収集や証拠の分析が容易になる
弁護士に依頼した場合、弁護士会照会などの方法を使うことで、相続人本人が請求しても開示してもらえない資料を取り寄せられることがあります。
また弁護士に集まってきた証拠の内容を分析してもらい、「実際に使い込みがあったといえるか」を判断してもらうことも可能です。
使い込みを証明するためには単に不審な出金があっただけでは足りず、それが本人以外のために使われたことを示す必要があります。
弁護士が証拠を分析すれば、その時点で事件の見通しをある程度立てることができます。
交渉や訴訟対応を任せることができる
証拠が集まったら相手方と交渉を行うことになります。
このとき弁護士に交渉を依頼しておけば相手との交渉に伴う精神的・時間的負担を減らすことが可能です。
また、相手方に弁護士がついた場合は弁護士同士の交渉となりますので、話し合いもスムーズに行きやすくなります。
交渉で解決できない場合は訴訟でお金の返還を求めることになりますが、最初から弁護士に依頼していればそちらの対応を任せることもできます。
さらに、お金を確実に回収できるように、必要に応じて相手の財産を仮差し押さえするといった対応も可能になります。
使い込みトラブルの相談は弁護士に
使い込み疑惑が持ち上がった場合、まずは弁護士に相談しつつ、証拠を集めることが重要です。
多額の出金があったからといって使い込みがあったとは限らないので、「使い込んだ」といえるだけの証拠を集める必要があります。
弁護士が見れば、ある程度の証拠がそろった時点で事件の見通しを立てることができます。
特定の相続人などによる使い込み疑惑がある場合には、一度ご相談いただけますと幸いです。