遺産分割協議書・遺産分割調停について
遺言がない場合などでは、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めることになります。
このときの話し合いの内容をまとめたものが遺産分割協議書と呼ばれる書類です。
この書類に遺産分割協議書に署名・押印することをもって、遺産をめぐる話し合いは終わった、と扱われることになります。
しかし、相続人の中に話し合いの内容に納得できない人がいる場合、遺産分割協議書に署名・押印してもらうのは不可能です。
このように当事者の話し合いで相続問題を解決できなかった場合、今度は家庭裁判所の調停に場を移して話し合いを続けることになります。
遺産分割の手続きについて
故人の遺産はいったん相続人全員の共有になるため、その後改めて相続人同士で遺産を分け合う手続きが必要になります。
このような遺産を相続人間で分配する手続きを遺産分割といいます。
そのうち、相続人同士の話し合いである遺産分割協議で分けるのが協議分割、協議分割ができなかった場合に家庭裁判所の調停で分け方を決めるのが調停分割です。
なお、遺産分割協議によって遺産を分配する場合、話し合いの内容をまとめた遺産分割協議書を作成するのが一般的となっています。
協議分割の手続きとルール
協議分割は、相続人全員の同意によって遺産の全部または一部を分ける手続きです。
協議分割を行うためには相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、合意に至る必要があります。
もっと遺産分割協議は必ずしも対面で行わなければならないというわけではなく、手紙や電話、文書の回覧といった形で行っても問題ありません。
いずれの場合も、相続人全員が遺産分割の内容に納得した場合に初めて遺産分割協議が成立することになります。
遺産分割協議は口頭で行うこともできますが、口約束で済ませた場合、言った言わないをめぐって争いが起きるリスクがあります。
そこで、遺産分割協議を行う場合、合意ができたときには遺産分割協議書を作成するのが一般的です。
遺産分割協議書を作成する場合は、遺産分割協議書の内容に、相続人全員が納得し、署名・押印したときに、遺産分割協議が成立することになります。
そして、一度成立した遺産分割協議については、詐欺があったなどの理由がない限り、やり直しはできません。
なお、遺言がある場合は故人の遺言にしたがって遺産を分けるのが原則になりますが、相続人全員の同意があれば遺産分割協議を通して遺言とは違った配分で遺産を分けることができます。
調停分割の手続きとルール
相続人同士に感情的なわだかまりがある、生前贈与を受けた相続人がいるなどの事情がある場合、相続人同士が対立して話し合いで遺産を分割するのが難しいことがあります。
遺産分割協議がまとまらなかった場合や話し合いそのものが不可能だった場合、家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判といった方法で遺産の分け方を決める必要があります。
そのうち遺産分割調停は調停委員会を介して話し合いを進める方法です。
一方、遺産分割審判は当事者がお互いに自分の主張をし、最後は裁判官の判断によって遺産の分け方を決める方法になります。
法律上は最初から遺産分割審判を申し立てることもできますが、実務上は遺産分割調停を申し立てるケースが圧倒的に多いです。
実際には遺産分割審判をいきなり申し立てた場合も、裁判所の判断で遺産分割調停に回されるケースが多くなっています。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停の申し立ては各相続人が行うことができます。
調停の手続きの進行を担当するのは、調停委員会です。
調停委員会は裁判官、調停委員で構成される家庭裁判所の組織です。
なお、実際の手続きの大半は裁判官ではなく、調停委員が行うことが多くなっています。
調停がはじまると、調停期日に関係者が呼び出され、調停委員が交互にお互いの当事者の話を聞く形で話し合いが進行します。
調停委員の提案に当事者が納得できた場合は調停が成立します。
調停成立時に作成される調停調書は債務名義と呼ばれる書類の一種であり、調書の内容にしたがわない当事者がいる場合には調停調書を根拠に強制執行を申し立てることも可能です。
一方、調停が成立しなかった場合は、審判手続きに移行します。
調停でも話し合いがまとまらなかった場合は?
調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、遺産分割審判と呼ばれる手続きで決着をつけることになります。
遺産分割審判は裁判官が遺産の分割方法について判断する手続きです。
証拠調べや調査の結果などを踏まえ、裁判官が審判を行います。
なお、審判の結果に不満がある場合は、即時抗告することができます。
まずは弁護士に相談を
遺産分割協議で話し合いがまとまらなかった場合、当事者同士の話し合いで解決するのは難しく、相続をめぐってトラブルに発展する可能性が高くなります。
相続をめぐるトラブルをこじらせないためには早期解決が重要です。
法律の専門家のアドバイスを受けることで、防げるトラブルもあります。
もし不安なことがある場合は、早めにご相談いただければと思います。