相続について相談する場合、皆様は誰に相談することを考えられるでしょうか。
考えられるのは、司法書士、行政書士、税理士等ですが、この中で「紛争」に対処できるのは弁護士だけです。
1 被相続人が相談する場合
相続人だけが相続の当事者ではありません。
理想的な相続は、財産を残す側の被相続人の意思が適切に反映されることです。
弁護士であれば、生前の財産管理から相続後までを被相続人の立場に寄り添ってサポートすることができます。
⑴ 遺言書の作成
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、偽造や紛失を防止するには公正証書遺言が適しています。
しかし、費用や手間がかかるという難点があり、また、ご親族の人数や関係性から相続紛争のおそれがない場合には公正証書化する必要がない場合もあります。
ご依頼者様にいずれが適切か判断した上で、内容、方式ともに不備が生じないように、弁護士が責任をもって作成します。
⑵ 遺言執行者として選任
遺言執行者とは遺言の内容に従って相続の手続きを進めていく人です。
主に遺言で非嫡出子の認知や推定相続人の廃除を行う場合に選任されますが、それ以外の場合でも選任は可能です。
就任した遺言執行者が相続人調査をはじめとする相続手続きを一手に引き受けることになり、迅速かつ確実な相続内容の実現を可能にします。
相続人や受遺者がなることもできますが、弁護士が就任すれば、中立かつ公正な立場からの役割を期待することができます。
⑶ 生前の財産管理
判断能力に不安がある場合には、生前の財産管理も弁護士にお任せ下さい。
成年後見や任意後見といった制度がありますが、弁護士がこれら後見人に就けば、まず、生前の法的トラブルを避けることができます。
さらに相続開始後は、後見人が各財産を相続人に引き渡すと同時に、相続人全員からの依頼があれば、遺産分割等の手続きにも関与することが可能です。
これまで財産管理を行ってきたという実績を背景に、スムーズな相続手続きの進行が期待できるのです。
⑷ 事業承継
事業を行われている方にとっては、その承継も重要な問題です。
事業承継にはいくつかの方法があり、中でも生前贈与や遺言が多く利用されています。
その際、後継者に多くの財産を集中させてしまうと遺留分侵害のおそれがあるため、あらかじめ対策を講じておかなければなりません。
また、単に会社財産を譲り渡すだけでは不十分であり、後継者の経営支配権を強固なものにするためには、株式譲渡、新株発行、種類株式等を適宜組み合わせる必要があります。
いずれも早めの準備が成功へのカギとなります。
まずは弁護士に今後の流れについてご相談下さい。
2 相続人が相談する場合
相続人同士がもめた場合だけでなく、相続人は以下の場合についても弁護士から適切なアドバイスを得ることができます。
⑴ 相続の放棄や限定承認
相続放棄は遺産に対する相続権を一切放棄すること、限定承認はプラス財産を超えない範囲でマイナス財産を相続することです。
いずれも相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述して行う必要があります。
その際には提出すべき複数の書類があり、また、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。
これらを3か月以内に終えるのは困難であることも多く、その場合は熟慮期間の伸張を申し立てる必要があります。
これらの諸手続きはもちろん、放棄、限定承認のいずれを選択するかの判断も含めて弁護士にお任せいただけます。
⑵ 遺産や相続人の調査
遺産分割協議を行うのであれば、遺産や相続人の調査は必須です。
協議する場合、その内容に目が行きがちですが、実はその前提となる遺産の確認や全相続人に連絡をとるという作業が決して容易ではないのです。
これらの作業を誰が負担するのかという時点で既に紛争が始まっていると言ってよいでしょう。
弁護士が行えば、調査の負担をめぐって相続人間の不公平が生じず、また、遺産や相続人の漏れを理由に協議がやり直しとなる事態を避けることができます。
⑶ 遺産分割協議の進め方
相続人間に対立があり冷静な話し合いが困難な場合や、これまで交流のなかった人が相続人の中に含まれている場合など、協議の進め方に戸惑うこともあるでしょう。
そのような場合、弁護士が法的観点に基づいて交通整理をし、かつ禍根を残さないように配慮しながら協議の進行を行います。
また、協議が成立したら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は不動産相続登記等で必要となり、また、後日の蒸し返しを防止するという重要な役割を持ちますので、弁護士に作成をお任せ下さい。
⑷ 遺産分割調停や審判
遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割調停や審判に進むことになります。
これらの手続きを利用するには、多数の書類を集めて自ら作成した申立書と共に提出することが必要ですが、弁護士に依頼すると、これらの面倒な準備を任せることができます。
また、弁護士は手続きに同席することはもちろん、裁判所が遠方の場合は代理出席することも可能です。
そして、審判では相手方も弁護士に依頼している場合がほとんどですので、相手に先んじて調停の段階から弁護士に依頼するのが得策です。
⑸ 遺留分侵害額請求
遺留分を侵害された相続人は侵害者に対してその侵害額に相当するお金を請求することができます。
この請求権には、侵害額の計算が複雑であること、そして、侵害者も相続人であることが多いという特徴があります。
弁護士に依頼すれば、正確な金額を算出した上で、いつまでにいくら支払うかといった相続人同士では話しづらい事項もビジネスライクに交渉していきます。
交渉が決裂した場合には、その後の調停や訴訟手続きについて安心して任せられることは言うまでもありません。
3 民法改正による新制度
ここまでは弁護士に依頼した場合のメリットについて解説してきました。
中には、できるだけ自分たちで解決したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、近年相続に関する法改正が大々的に行われています。
これらについての正確な情報や理解がないと重要な利益や権利を失いかねません。
弁護士への依頼に及ばなくとも、質問やお悩みについてご相談いただければと思います。
(民法改正による新制度)
- ・自筆証書遺言の方式の緩和
- ・遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求への改変
- ・特別寄与料の創設
- ・預貯金の仮払い制度の創設
- ・配偶者居住権の創設
- ・自筆証書遺言保管制度