不動産相続
不動産の相続は、現物のままだと分割が難しいなどの事情から預貯金の相続よりも複雑になりがちです。
共有のままにしておいたり、相続登記をしないで放置していたりすると、新たなトラブルが発生するリスクもあります。
ここでは不動産相続の大まかな流れや不動産の分割方法、さらに不動産相続特有の問題点について紹介します。
不動産の相続の流れ
まず不動産の相続の流れについて簡単に確認していきましょう。
遺言の有無を確認する
まず、遺言の有無を確認します。
遺言の有無によって、相続の流れが異なるからです。
公正証書遺言の有無は公証役場の遺言検索システムを使うことで確認できます。
一方、自筆証書遺言の場合は相続人が自力で探すしかありません。
貸金庫、自宅など、心当たりのありそうな場所を探してみましょう。
なお、自筆証書遺言を見つけた場合、裁判所の検認という手続きが必要になります。
検認が終わる前に、勝手に遺言を開封しないように注意しましょう。
相続財産や相続人の調査
何を誰が相続するのかがわからないと、相続の手続きを進めることはできません。
そこで、遺言書の有無を確認したら、相続財産の内容や相続人を調べる必要があります。
遺産分割協議
相続人が判明したら、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いを行います。
これを遺産分割協議といいます。
なお、遺言がある場合は、遺産分割協議は必須ではありません。
相続税の申告
遺産分割協議がまとまり、誰が何を相続するのかを決まったら相続税の申告を行います。
不動産の場合、相続税の金額は不動産の時価(相続発生当時の評価額)をもとに決められます。
家屋の場合は、固定資産税評価額が相続時の不動産評価額になります。
一方、土地の評価額の計算方法はもう少し複雑です。
毎年7月に発表される路線価をもとに計算する路線価方式、固定資産税評価額をもとに計算する倍率方式があり、基本的には前者の方法が使われます。
なお、アパートや貸家の敷地に使われている土地(貸家建付地)や500平方メートル以上の広すぎる宅地(地積規模の大きな宅地)については、評価額の減額が認められており、計算が複雑になります。
相続登記
不動産を誰がもらうかが決まったら、相続登記によって不動産の名義を変更する必要があります。
不動産の相続の仕方
不動産の相続の仕方には現物分割、代償分割、換価分割という3つの方法があります。
現物分割
現物分割とは、不動産をそのまま相続する方法です。
そのまま不動産を特定の相続人の名義にするだけですので、手続きが簡単というメリットがあります。
被相続人が複数の不動産を所有しているような場合や、預貯金などの他の財産が十分にある場合では、この方法による分割がしやすいケースといえます。
ちなみに土地を分筆し、分ける場合も現物分割にあたります。
代償分割
不動産を相続した人が他の人に代償金を支払って分割する方法です。
代償金の金額は相続人同士の話し合いで決めるのが原則ですが、もし話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の手続きによって決めてもらうことができます。
換価分割
不動産を売却し、その代金をみんなで分割する方法です。
不動産をそのままの形で相続できないというデメリットはありますが、財産を公平に分けやすいというメリットがあります。
不動産相続の問題点
不動産には現物のままだと分けにくい、相続時には登記が必要といった特徴があります。
そのため、実際の相続ではトラブルを招く原因になりがちです。
ありがちなトラブルとしては次のようなものがあげられます。
分割しにくい
不動産は預貯金と違って、現物のままだと分割が難しいという特徴があります。
また、財産としての価値が高いため、現金が十分にないようなケースでは不動産をもらった人とそうでない人との間で相続トラブルになりがちです。
共有のままにしておくとトラブルを招く
不動産は相続人の共有名義にすることも可能です。
しかし、だからといって共有のままにしておくと売却や管理がしにくくなって、のちのちトラブルの元になりやすくなります。
また、何年も共有名義の登記を放置しておくと、さらに相続が起きて利害関係者が増えてしまう可能性もあります。
不動産相続の相談は弁護士に
マイホームの他にめぼしい財産がないようなケースなどでは、不動産の相続がきっかけで相続トラブルが発生してしまうことも珍しくありません。
こうしたトラブルが起きそうになった場合、弁護士が早めに介入することが早期解決につながることもあります。
もし相続に関して不安なこと、気になることがありましたら、まずはお気軽にご相談いただければと思います。